慶應義塾大学理工学部電子工学科  神成研究室

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2020年度

レーザー学会学術講演会第41回年次大会において、稲澤健太君が優秀論文発表賞、高橋和輝君が論文発表奨励賞を受賞

  2021年1月18日~20日にオンライン開催で実施されたレーザー学会学術講演会第41回年次大会に、神成研究室から以下の6件を口頭発表しました。今年度はコロナ禍で年度の前半はほとんど実験ができず大きく出遅れましたが、発表ぎりぎりまで頑張って中身のある発表にこぎつけることができました。レーザー学会年次大会では、発表時に35歳以下の若手研究者の発表に対して優秀論文発表賞を各研究分野カテゴリーから1件ずつ計9名、論文発表奨励賞を約10名に授賞しますが、神成研からは昨年の3名受賞に続いて、修士2年の稲澤君が優秀論文発表賞、修士1年の高橋和輝君が論文発表奨励賞を受賞しました。ポスドクなどの研究者と競っての受賞は価値があります。
  表彰式は5月31日開催のレーザー学会総会において行われます。

  1.時間分割多重化マルチライン時空間集光による広視野多光子顕微鏡の光軸方向分解能向上
  発表者:稲澤健太

  2.単一光子性が満たされない条件下での非線形量子干渉イメージングの理論解析
  発表者:高橋和輝

  3.時空間ロックイン検出による時空間集光パルスの補償光学
  発表者:石川智啓

  4.Co2+:MgAl2O4可飽和吸収体を用いた青色LD励起Tb3+:YLFレーザーの 受動Qスイッチ動作
  発表者:塩谷優太

  5.ヘテロダイン型周波数干渉を用いたシングルショットテラヘルツ波計測
  発表者:高澤一輝

  6.Type-II周期的分極反転ニオブ酸リチウム結晶導波路を用いた多重周波数モード混合
  発表者:山岸佑多

レーザー学会誌「レーザー研究」9月号に神成研オリジナルの波長分割多重量子シミュレータの解説論文発表

  レーザー学会が発行するレーザー研究誌9月号に「波長分割多重プログラマブル量子シミュレータ」と題した,保坂助教が筆頭著者で執筆した9ページにわたる解説論文が掲載されました.この量子シミュレータは2023年3月までの期間でJST-CRESTの助成を受けてNICTとの共同研究で実施しているものですが,シミュレータ全体の原理と設計概要については現在進行形であるために公刊する機会がこれまでなかったものです.
  解説論文の最後には,神成研究室のこの取り組みの目標が以下のように書かれています.
  「この波長分割多重量子シミュレータ開発研究でめざすものは,単なるボゾンサンプリング光学回路の実現ではない.周波数モードというリソースを用いた量子情報処理の可能性を実証することにある.古典論的超高速フーリエ光学の手法を用いて,量子論的分光センシング,イメージ計測にその有用性が展開できるものと大いに期待している.」
  是非一読してみてください.

プラズマ・核融合学会誌8月号にSTAMP解説論文発表

  プラズマ・核融合学会が発行するプラズマ・核融合学会誌8月号に「単一ショットバーストイメージング法STAMPの原理と応用」と題した,神成先生執筆の8ページにわたる解説論文が掲載されました.フェムト秒レーザーパルスの周波数チャープから原理を丁寧に説明し,初機STAMPからSF-STAMPそして最近のFACEDの応用とLA-STAMPまでが解説されています.
  もともとストリークカメラ計測などを用いた超高速イメージングは,慣性核融合におけるターゲットの爆縮やプラズマダイナミクスを計測するための手法として開発されてきたものが多く,2014年のNature Photonics誌での最初の発表以来あらためてこのコミュニティからSTAMPが注目を集めたのは嬉しいことです.
  http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2020_08/jspf2020_08-jp.pdf

超高速プラズモンパルスのナノ集光による酸化グラフェン還元とその場CARS計測の論文をOSA Continuum誌で発表

  2020年9月15日刊行のOSA Continuum誌 第3巻,9号において,現オリンパス(株)の富田恵多先輩が修士論文研究で行ったフェムト秒プラズモンパルスを金ナノテーパで集光させて酸化グラフェンシートを200nmサイズで還元してグラフェンストライプを作成する成果が掲載されました.
  富田さんは,このフェムト秒プラズモンナノ集光の研究で過去に国内外の会議において何度も表彰されています.コロナ禍のせいなのか、査読・掲載プロセスに長い時間がかかりましたが,新しい雑誌として注目されているOSA Continuum誌に掲載されたことは喜ばしいことです.
  この還元グラフェン形成法は,熱伝導性,電気伝導性が桁違いに悪い酸化グラフェン膜表面に,逆に熱伝導性,電気伝導性が非常に優れたナノメートルサイズのチャネル構造を任意形状で描画形成できることから,ナノメートルサイズの熱伝導,キャリア伝播の研究や応用に期待できる技術です.フェムト秒プラズモンパルスを計測用のプローブとしてだけではなく,エネルギー量子として応用できた成果も新しい展開につながるはずです.
  超高速プラズモンパルス光学を先駆的に研究してきた神成研究室の成果がここ数年いくつも発表できていることは,近接場顕微鏡の構築から積み上げてきた多くの先輩OBの方々の貢献があっての事だと思います.歴代のナノフォトニクスチームの皆様,おめでとうございます.

リモート開催CLEO Pacific Rim 2020において,修士1年の山岸君,塩谷君,糸山君が論文発表. 次回のCLEO Pacific Rimは2022年7月31日―8月5日に札幌開催

  4月以降すべての国際会議がリモート開催となり,容易に発表を視聴できる機会が増えたことは非常にありがたく,いずれの会議においても参加者数(論文発表数は例年通りかそれ以下)が非常に増えていて発信力の強化にはなっているようです.
  一方で論文発表する側から見ると,会議の特徴が殆どなくなってしまったので,どのリモート会議で発表しても同じ20分の講演時間という無味乾燥的な手応えになってしまっています.やはり,論文で見かけた研究者が居並ぶ大きな部屋のステージ上から緊張して講演する醍醐味は経験した者にしかわからないと思います.
コロナ終焉と来年度の通常開催を祈りましょう.
  今年のCLEO PR2020では,ポスターセッションに工夫が施され,各発表者にリモート会議室が割り当てられて,質問者はそのリモート会議に入室して随時リアルにディスカッションできる方法がとられました.ポスターファイルが見られるだけではなかったので工夫が感じられました.ポスター発表の塩谷君,糸山君は緊張感があったでしょう.
隔年で開催されるCLEO Pacific Rimは,次回は2022年夏に札幌国際会議場での開催が決まっています.神成先生がプログラミングChairとなるそうです.
  https://www.cleopr2022.org/

[論文タイトル]
[著者名]
1.“Mixing of Spectral Multimode Quantum States Generated by Dispersion-Engineered Nonlinear Crystal“
  Yuta Yamagishi, Akihito Omi, Aruto Hosaka, Kazuki Takahashi, and Fumihiko Kannari
2.“Single-Shot Ultrafast Burst Imaging using Integral Field Spectrograph with a Lenslet Array”
  Shota Itoyama, Hirofumi Nemoto, Kazuki Takasawa, Riku Watase, and Fumihiko Kannari
3.“Characteristics of Ti:Sapphire Laser Pumped by 450-nm Blue Diode Laser at Cryogenic Temperatures”
   Yuta Shioya, Shogo Fujita, and Fumihiko Kannari

Integral Field Spectroscopyを用いた新型STAMP:単一ショット超高速バーストイメージング法を発表

  2014年に単一ショット超高速バーストイメージング法STAMPを発表して以来,(1)25枚のバーストイメージを単一ショットで取得できるSF-STAMP, (2)計測時間窓をナノ秒まで拡張したFACED-STAMP,(3)1 kfpsの高速カメラと組み合わせた高繰り返しSF-STAMPなど,多くのバージョンアップを行って来たSTAMP技術開発ですが,今回,これまでの欠点を大きく改善したLA-STAMPを開発し,CLEO Pacific Rim 2020およびOptics Letters誌にて発表しました.
  SF-STAMPはバンドパスフィルターを用いるためにプローブレーザパルスの光利用効率が悪く,比較的強いチャープレーザーパルスが必要でしたが,Integral Field Spectroscopyを用いたLA-STAMPにおいては最大25倍の光利用効率の改善を達成しました.また,計測時間窓もSF-STAMPにおいて課題であったFACED光学系との不整合性が解消され,高速カメラでの計測窓に至るまでのサブμ秒域のギャップを埋める性能を実現できます.
この究極的な性能を実現したLA-STAMPは,マイクロレンズアレイと回折格子を用いた面内分光法で実現され,空間分解能は単純にマイクロレンズアレイの密度とイメージ光学系の倍率で決まるため,1mの空間分解能を実現可能です.フレーム数は,分光光学系の波長分解能で決まり,25枚以上が実現可能です.
  この成果は,8月3日から開催のCLEO PR2020においてポスター発表され,ほぼ同時にOptiics Letter誌での掲載も決定しました.

昨年度の研究成果を3件,Applied Optics誌6月号で刊行。

  ある意味,COVID-19で大学閉鎖の副産物かもしれませんが,4,5月に集中して研究成果を論文化することに専念でき,Applied Optics誌6月号に昨年度の成果3件が掲載されました.

[論文タイトル]
[著者名]
1.Extenstion of time window into nanoseconds in single-shot ultrafast burst imaging by spectrally sweeping pulses
  根本寛史、鈴木敬和、神成文彦
2.640-nm Pr:YLF regenerative amplifier seeded by qain-switched laser diode pulses
  原優作、藤田将吾、神成文彦
3.Output characteristics of Pr:YAIO3 and Pr:YAG lasers pumped by high-power GaN laser diodes
  藤田将吾、田中裕樹、神成文彦


第40回レーザー学会年次大会「論文発表奨励賞」を,神成研究室から大見聡仁君,原優作君,根本寛史の3名が受賞。

2020年1月20日~1月22日に仙台国際センターで開催された第40回レーザー学会年次大会には神成研究室から8件の発表を行いましたが,表記3名の口頭発表が「論文奨励賞」として表彰されることになりました.この賞は、年次大会に於いて将来性のある満35歳以下の若手発表者に贈られるもので,全体で10名が選抜されました.このうち3名を神成研から輩出したことは素晴らしいことです.
とくに原君は,卒業論文の成果が受賞対象となり,プロの研究者に負けない素晴らしい研究成果として認められたことになります.
レーザー学会年次大会で複数名が表彰されたことは過去にもありましたが,誇らしいことです.来年の北九州での年次大会でも賞がとれるように頑張りましょう.

ALPS国際シンポジウムがデジタル会議で開催され,神成研からは5件口頭発表

例年4月にパシフィコ横浜で開催されてきたALPS国際シンポジウムは,コロナウィルス感染予防のため,今年はZoomを使った遠隔会議で開催されました.事前に音声録音した発表スライドからビデオを作成し,発表時間にストリーム配信して,質疑応答はネットを介して行う形態でした.
神成研からは保坂助教の発表をのぞいてはポスター発表でエントリーしていましたが,すべて口頭発表になり思いがけず英語口頭発表の機会を得ることとなりました.
なお,今年もALPSの看板等のデザインはOGの中村葵さんが作成されましたが,残念ながら露出が少なくなってしまいました.下のイラストが通常会議場に設置される横看板用のものです.
神成先生は,ALPSの実行委員長ですが,ALPSを含む15の専門会議を包括する親会議OPICの運営会議議長でもあり,パシフィコ横浜での開催中止からデジタル会議開催への移行と各専門会議との調整,ビデオ公開サイトの立ち上げなど大変忙しかったようです.今年開催の国際会議はすべてデジタル会議になりそうですが,これを機に国際会議のあり方も大きく変わるかもしれません.
タイトル
発表者名
1.Programmable control of multimode squeezed state in the frequency domain
  保坂有杜助教
2.Ti: sapphire laser pumped by 450-nm diode laser at low temperature
  M1塩谷優太
3.Single-shot ultrafast 2D-burst imaging using integral field spectroscopy with a lenslet array
  M1糸山翔太
4.Single-shot THz wave measurement by spectral interferometry based heterodyne detection
  M2高澤一輝
5.Generation and mixing of multimode quantum states with dispersion-engineered nonlinear crystals in the frequency domain
   M1山岸優太

【ALPSの看板等のデザイン(OG中村葵さん作成)】

学部4年山岸佑多君2019年度優秀卒業論文賞受賞
博士2年鈴木敬和君2019年度優秀研究活動賞(博士)受賞

 2019年度は,1月末からの新型コロナウィルス感染予防のため卒業証書授与式も大学院学位授与式も取り止めとなり.さらには,応用物理学会も開催中止と,各課程修了者には達成感を感じる機会が奪われてしまいました.
そんな中,電子工学科の全卒業生の中から5名の優秀卒業論文賞受賞が表彰され,神成研究室の山岸佑多君もその1名に選ばれるという栄誉に預かりました.この賞は,卒業論文発表会の発表と論文内容から選ばれるののです.
 同君の卒業論文タイトルは,「Type-Ⅱ 周期的分極反転ニオブ酸リチウム結晶を用いた多重周波数モード混合」で,同君の実験での巧みな技術と集中力および理解の高さが実を結びました.おめでとうございます.

【優秀卒業論文賞受賞の様子(B4山岸君)】

 一方,博士課程を2年で早期修了した鈴木敬和君には,総合デザイン工学専攻から優秀研究活動賞(博士)が授与されました.リーディング大学院プログラムで修士(工学)と(経済学)を修めた上に,2年での博士課程修了という事実が高く評価されたのでしょう.
 鈴木さんの博士論文タイトルは,「Study on Single-shot Ultrafast Burst Imaging Utilizing Frequency-to-time Encoding of an Ultrashort Laser Pulse」です.おめでとうございます.

【優秀研究活動賞受賞の様子(D2鈴木君)】

2020年度 Spring colloquim

 2020年3月21日〜3月23日の3日間、毎年恒例のSpring Colloquiumをレクトーレ葉山湘南国際村で行い、2020年度のスタートを切りました。今年は新型コロナウイルスによる不安もありましたが、マスクやアルコール消毒、検温の徹底、例年以上に広い会議室を利用する等の対策を講じ、最後まで全員無事に参加することが出来ました。
 大学院生は光分野の最新トピックスの紹介や今年度の研究提案を発表し、新4年生も自分で勉強したトピックスについて先生の前で初めての発表を行いました。発表前は緊張していたようですが、準備してきた成果が出ていたように思います。新4年生のチーム配属も決定し、研究室運営のルール確認、安全講習会も済ませていよいよ新学期スタートです。
今年度はこのメンバーで頑張っていきます!

新規メンバーでの初めての集合写真。